前回に引き続き、活版印刷機をなぜ今の時代に“復活”させたのかをご紹介をしたいと思います。
この「活版印刷」という印刷技術は、15世紀に発明され、これまで500年もの長い間、歴史の中で頼りにされてきた印刷手法です。
昔はどこの会社もみな活版印刷機で印刷をおこなっていました。弊社にあるハイデルベルグ社製「プラテン機」も同様に、以前はたくさんの印刷を行い立派に動いておりましたが、様々な技術革新でオフセット印刷機やプリンターが誕生し、近代化の流れで「生産性」、「多様なニーズ」が求められていく中、弊社に於いてもオフセット印刷機を導入し、活版印刷機でこなしていた仕事も次第にオフセットにて印刷を行うようになり、時代の流れと共に需要も減り、やがて活版印刷機も役目を終える事になった。…そんな時代背景があります。
役目を終えた「プラテン機」ですが、この活版印刷機については、印刷の原点でもあり、会社の歴史を想う事から大切に養生カバーに覆われ工場の一角で大切に保管されておりました。
一度は衰退した「活版印刷」ですが、2000年以降、欧米に於いて「レタープレス」(活版印刷)がハンドクラフトの潮流のなかで新たに見直され、多くのレタープレススタジオが誕生しました。近年日本に於いても同様に「活版印刷」が見直され、今や印刷には無くてはならない“選択肢”となっております。
当時は、“Kiss touch”といわれる印圧をかけない‘平坦な印刷’が主流でしたが、現在では“Deep Impression”すなわち‘強く印圧をかける’表現が主流となり、印刷面の凹んだ陰影の美しさが新たな価値として受け入れられています。
実際にいろいろな作品を手にとってみると、風合いや質感のある紙に印刷されることで、シンプルでありながらどこか懐かしさや温かみがあり、文字の陰影や凹みの手触りも新鮮で、それでいて洗練された高級感も持ち合わせており、『人間の“感性”に響く印刷物』であると感じます。
現代の印刷機械では出来ない、この「活版印刷」の可能性と素晴らしさをぜひ多くの皆さまに知って欲しい、実際に手にとって感じて欲しい…。
この様な揺るぎない思いが私たちの心の中にあり、“復活”に向けてこれまで準備を進めてまいりました。
続きは次回で。